高ポゼッションを表明したフィンク
ひさびさに地上波で放映されたことや、監督がまた交代したこと、イニエスタが久々に出場して首位のFC東京を撃破したことなど割と注目だった東京対神戸戦について書く。

事前の報道だと、クラブの希望通り高ポゼッションのサッカーを目指していくとフィンク新監督。ただ、どうもこの試合までほとんど練習時間がなかったようなので時間が経つとどうなるかは分からない。

さしあたり前半を中心に書いてみたい。イニエスタの新ポジションやはっきりした4-4-2守備の攻略が見られたので欧州の標準的な戦術はきちんと使いこなせる人なんだなぁとは思った。
もっとも出場停止が多かったためのスクランブルだったらどうしよう。

神戸の対4-4-2 イニエスタのポジショニング
前半は神戸がボール保持、東京は非保持からのカウンターがほとんどだったのでそれについて。

東京の守備は典型的な4-4-2。このブログでも何回か書いたけど合理的なシステムなので採用チームは多く短期間で形にしやすく格上格下問わずかなり戦える。ただ、欧州では10年くらい前から、最近ではアジアの代表チームですらこの攻略が常識化してきた。

神戸はメンバー紹介は3バックだったみたいだが、実際は図のような形が多かった。

myboard01

前線はほぼ4トップ。SHは内側に絞ってゾーンの中間ポジションにいることが多かった記憶。横幅確保隊はSB。
欧州で2トップ殺しの定番2-2ビルドアップだが、イニエスタのポジショニングがちょっと面白かった。

基本は相手右FWの斜め後方。偽アンカーとかいう人もいるらしい。CBと山口でFWを揺さぶり、イニエスタにフリーで渡せる状況を作っていた。東京の1列目と2列目がやや空き気味で、イニエスタはFWの死角かつ相手ボランチの守備エリアに入らない場所で能力を存分に発揮。というか2トップでビルドアップ制限するのはキツい時代。

東京からすると、ボール保持チームに1列目と2列目の間を制圧されると超きつい。FWはイニエスタが死角に入るので捕まえづらい。中盤がヘルプに行くとしても相手SHが中央に絞っているのと相手SBがいるので、ヘルプによって空いたスペースを使われてしまう。

そもそもゾーンの間に神戸の選手が多いのである程度サイドを捨てざるをえず、おまけにビジャあたりは下がってきてもプレーできるので東京の選手は相当めんどくさかったと思う。

そういうわけで、時間とスペースを存分に与えられたイニエスタがサイドチェンジを中心に空いた選手をバンバン使うので、FC東京は失点しなくてよかったねという展開だった。神戸のビルドアップは理詰めなので、ピッチ上の選手だけで防ぐには準備が必要だろう。長谷川監督は特に動いている様子はなかった。

どうしようもないじゃん!となりそうだが、神戸の弱点は利点と表裏一体で、被カウンター時は根性で守るしかないこと。いやマジで。実際東京のカウンターは威力十分で、D・オリヴェイラが単独で決定機をそれなりに作っていた。長谷川監督はこれで十分勝機があると思ったのかも知れない。

正直、東京はさすが首位のチームで個々の力は神戸より勝っているように見えたし、ここに久保くんさんとハヤブサ永井がいたら結果は逆だったかなぁとも思う。東京は3対1の絶対優位カウンターで点がとれなかったのが直接的な敗因か。

イニエスタのゴールは素晴らしかった。多分、目線かフェイクでGKのタイミングを外している。さらっと化物。

神戸の今後
リージョ監督は最初イニエスタをインサイドハーフで使っていたけど、相手に「イニエスタのエリアから攻める」をやられて前線に上げざるをえなかった記憶がある。「ロナウジーニョを抑えるには、マークするのではなくマークさせればいい」はオシムの言葉だったか。

この試合だと神戸がボールを持つことが多かったのでなんとも言えないが、今後ビルドアップを制限され撤退守備することが多くなったときに上記の問題がまた出てきそうな気がする。ちなみにイニエスタやポドルスキは「ここはプレスにいけば後方でボールとれる!」「ここを通すとマジでヤバい!」というときは結構必死で守備をする。あんまりそう見てもらえないのが哀しい。

あとボール保持チームの悲哀として、いざ相手にボールを持たれると単純に奪い返せないことが多い。後半オープンな展開になったとき、FC東京の選手が強引にでも神戸守備を剥がしてしまっていたので…。

もっとも、練習時間がほぼない状況でそれなりに準備してきたフィンク新監督は結構期待できそうな。出場停止選手が多かったためのスクランブルの可能性もあるし、次の試合にどうするかで方向が見えそうな気がする。次戦の大分は3バックだし。


こちらもどうぞ
日本代表を考える 今さら振り返るアジアカップ決勝カタール戦
【管理人記事】実験企画 知ったかぶりしたい人のための今さら分析するU-20W杯 日本対韓国
日本代表を考える 森保監督の広島時代の3バック基本編