相手をリスペクトしすぎた?鳥栖
※ツイッターでご指摘いただきました。フォメ画像でGK飯倉選手が板倉になってしまっています。
申し訳ありません。


結果は1−6でアウェーの神戸の圧勝。

あまりにも鳥栖が悪すぎたのと神戸が良すぎた試合。申し訳ないことに普段の鳥栖をそれほど見ていないので、この試合が特に悪かったのかいつも通りなのかはよくわかりません。ごめんなさい。

神戸は前節に続く圧勝劇で、新戦力があっという間にフィットしさらに既存の選手のポテンシャルが大きく引き出されている。これが上位陣との試合でもできるならちょっと面白いかも。

神戸が終始圧倒する展開だったので、概略とちょっと気になった場面について書く。

全体的には鳥栖が神戸をリスペクトしすぎたのか何なのか、はっきりしない位置取りとプレッシングが頻発し、神戸がそれを軽くいなしてやりたい放題だった試合というか。

管理人の視聴環境だと試合中の選手の判別がつきにくかったりするので、選手名が間違っていたらごめんなさい。

01

試合をご覧になった方はご承知の通り、神戸GKの飯倉は攻撃時ほぼDFでビルドアップに関与しまくり。なのでフォメ図ではほぼDFの位置に記載しているw
鳥栖が飯倉の存在をどう考えていたのか分からないが、前線プレスが全くハマらなかった主原因ではあると思う。
ちょっとよく分からなかった鳥栖の前線プレス
試合を通じて気になったのは鳥栖のプレッシングのルール。個人的にはよく分からなかった。一言でいうと「連動していない」。

それで終わらせるとアレなので少し掘り下げると、まずツートップと両サイドMFはかなり高い位置から神戸最終ラインにプレスする「姿勢は見せる」。ほとんど4−2−4プレッシング。「見せる」と書いたのはやっていることが全く効果的に見えなかったから。

神戸は3バックのうちダンクレーが右、大崎とフェルメーレンが左に開き飯倉が上がり疑似4バックを形成、更にサンペールがアンカーの位置に入る形がメインだった。GKをプレッシングの逃げ場所にするのではなくはっきりビルドアップに組み込む形で、極端に言えばこの時点で神戸が鳥栖よりフィールドプレーヤーが1人多い状態になっている。

つまり鳥栖の前線4人では単純に人数が足りない。更に鳥栖前線は(特に前半は)神戸ビルドアップ隊にそれほど強力にプレスしないので、神戸は誰かしらがオープンな状態でボールを持ちまくりであった。

ちょっと想像すると、鳥栖側は神戸を3CB+アンカーの3−1ビルドアップと想定。2トップのうち1人がアンカーを、もう1人が中央CBを見て、両サイドMFは左右のCBにプレス。いわゆる疑似3トップのハイプレスをやりたかったのか。

ただ言うまでもなく相当に前がかりとなり中盤がスカる。クロップリバプールの3トッププレッシングでも中盤は3人を確保しており、巧みなコース切りで中央に追い込むのが主眼。おまけに保持力もある。

踏まえて鳥栖を見ると、両サイドは一応ホルダーには寄る。ただアンカーへのコース切りが甘くスコスコ繋がれる。ここでビルドアップを破壊しないと総撤退となるのでもうちょっと必死でもいいと思うのだが、飯倉のポジショニングに戸惑っているのか何なのかほとんど追わない鳥栖前線。さらに外されたときの戻りも遅いというか、戻る気がないように見える。

つまり前線で是が非でも止めるつもりもなさそうで、当初の予定が狂ったのを運動量で修正する気もなさそう。かつ諦めて総撤退という手も取らない。そういう意味でよく分からなかった。

で、鳥栖の最終ラインは「ボールホルダーがノープレッシャーならラインを下げる。神戸2トップがウロウロしてるし」ということであんまりハイラインではない。CBはもちろんSBもお付き合いする。

というわけで高い位置にいるけどビルドアップ制限がほとんど出来ていない前線4人と最終ライン4人がまるで逆の動きをし、さらに神戸インサイドハーフが中盤横に降りてきてスペースを使いまくるので圧倒的な神戸ペースで試合が進むことになった。

02

鳥栖は「神戸疑似SBにボールが出たらプレス、疑似CBの大崎飯倉に下げたところに2トップがプレッシャーをかけ、前に蹴らせて回収か苦し紛れの繋ぎをかっさらってショートカウンター」をしたかったように見えたのだが、そのときアンカーのサンペールがフリーかつそこへのパスコースを塞ぐようにプレスをするわけでもなく、2トップの片割れがアンカーをマークするわけでもないので余裕を持って繋がれていた。

で、裏を使われるクエンカと安が割とゆっくり持ち場に戻るので簡単にサイドで起点が作れる神戸。例えば左だと高徳、イニエスタに加えてTJが開いてくることで容易に数的優位を作って突破していた。行き詰まっても後方のダンクレーやフェルメーレンに戻せばやり直しが効く。

鳥栖両サイドMFはポジションを下げなかったので多分チームオーダーなのだと思うけど、監督さんがこれでよしとしたのかどうなのかはよく分からなかった。

試合を象徴する神戸の1点目
※この項の図は、鳥栖の中盤の選手名が不正確な可能性が高いです。管理人の視聴環境によるものです。ごめんなさい。

神戸の1得点目。飯倉から高徳に繋げるが、安がプレスしフェルメーレン⇒大崎まで戻す。ここに鳥栖の前線がプレスをかけるが他の選手が連動せず、結果また高徳まで繋がれる。

03

前述の通り鳥栖の両サイドMFはなかなか戻らず、逆サイドのイニエスタと西(これは仕方ないが)、そして山口がどフリーになる。

04

鳥栖は鳥栖でこれが本来の形なのだろう、高徳に2人プレスするがコース切りが甘く、余裕を持って山口に繋がれてしまう。

鳥栖の両SBは試合を通じてCBと同じ高さを保つことに終止していて、このシーンで小林は山口に行きかけるも高徳が持った瞬間すぐにUターンしていた。多分高徳が縦に出すことを警戒したのだと思うが、神戸の2トップは中央に固まっていてサイドに走り込む要員はいなかった。このため山口は余裕を持ってボールを持つ。まだ戻らない鳥栖中盤。

山口はイニエスタに預け、ここで慌てて鳥栖がチェックに行くが、よくも悪くも人への意識が強すぎる。イニエスタに2枚(これは仕方ない)、更に古橋に2枚がピッタリ張り付き、西と何より中央で山口がフリーになってしまい、合わせて古橋についたCBのスペースがガラ空き。

05


ずっとタイミングを見計らっていた山口がスペースに走り込み、ノープレッシャーの西から見事なパスが出て先制点。

結局、高い位置を取るわりにあまり戻らない鳥栖前線と、頑なに4枚のライン形成にこだわる鳥栖最終ラインのチグハグさがモロに出た場面だったように思う。

また、妙に人への意識が強い局面とルーズな混在しているのも非常に気になる。相手陣内のプレッシングは人への意識が強いのは当たり前なのだが、自陣最終ラインやバイタルでのルールはどうなっていたのだろう。それともエリアごとではなく相手選手ごとにルールを決めていたのだろうか。

このあとも逆サイドが空きがちなのをイニエスタの高精度サイドチェンジで狙われまくられる鳥栖であった。
思うこと
結局このあとも大差ない展開で、後半やや鳥栖が持ち直すものの神戸の圧勝。トーレスの引退試合は非常にほろ苦いものになってしまった。

後半鳥栖が開き直ったプレスを仕掛けたときには神戸ビルドアップ隊はかなりミスをしていたので、正直完成度はまだまだの面がありそう。なので、整然としたプレッシングを行う上位チームと当たったときに神戸がこのサッカーを再現できるかはまだ分からない。ぜひとも再現してほしいが。選手の質は尋常ではないので。また、フィンク監督は(ここまでの戦力が整う前は)相手のボール保持力が上回る時はビジャウェリントンで直接ライン裏を狙うサッカーをしているので、以前も書いたけど現戦力で2タイプの戦術の使い分けをやりだしたら非常にエグく面白いチームになると思う。

また、酒井高徳とフェルメーレンの加入は純粋にチーム力の向上につながっている。神戸ディフェンスは被カウンター時にとにかく3CBが中央を締める。で、両ウイングバックがシンプルに戻り5バックを形成する。

それで終わらず、高徳サイドで追い込めそうな時はフェルメーレンがサイドに進出し高徳とのコンビで奪う。このフェルメーレンの判断が絶妙だった。そして高徳もそれをよく分かっていた。どのチーム相手でもこれが出来るなら心強い。

高徳は1対2の局面でもポジショニングを適切にすることでサイドに誘導し1対1を作るのがうまく、攻撃時は足元の上手さと縦への推進力で貢献している。本人も「Jリーグのプレスはあまり脅威に感じない」という意味のコメントをしていた。以前神戸サポの方がコメント欄に書いてくださっていた通り大当たり補強だ。個人的には初瀬も嫌いではなかったのだけれどw

鳥栖は高い位置で奪えた時はそれなりにチャンスになっていたが、全体的にチャレンジアンドカバーというよりチャレンジアンドチャレンジになっていて、神戸ほど足元技術の高いチーム相手だといざ剥がされたときにピンチを招きやすく、更に思ったほど戻りが早くないのでいつもこうなら結構厳しいシーズンになりそうな気がする。

前述の通りいつもはどうなのか知らないが、中途半端に前線で突っかけて外されるなら総撤退プランがあっても良いような気がする…ホームだとそうもいかないのかな。

あれだけのセレモニーをやったあとでは難しいけど、トーレスは引退を撤回してくれないだろうか…1人気をはくというと美化しすぎだけど、うまくアクセントをつけられていたのがトーレスだったので…。


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